ゴッホの油絵のような厚塗りって
素敵ですね。
残念ながらパステル画で
そのようなモリモリの厚塗りは
難しいですが
厚塗り、インパストのやり方について
物語っていこうと思います。
厚塗りしたいと思っていた方は
最後までお付き合いくださると
有難いです。
では、いってみましょう。
目次(押すとその記事にジャンプします)
パステル画での厚塗り(インパスト)とは
インパストとは練ったものという意味で
厚く塗った絵の具を指すそうです。
厚塗りして下の色を隠し
部分的に強調する技法で、
もとは油絵の技法のようです。
伝統的な厚塗り(インパスト)は
全部を厚塗りするわけではないそうです。
とはいえ、とにかくゴッホの絵のように
厚塗りの絵はインパクトがありますね。
ちょっとやってみたい、とか
好まれるのも分かります。
さて、パステル画でのインパストは
どうでしょうか。
まず、ソフトパステルなどは
少量の糊剤で固められて作られています。
このようなパステルは
ドライパステルと呼ばれます。
他にはドライパステルはハードパステル、
セミハードパステル、パステル色鉛筆があります。
もともと絵の具というのは
顔料(ピグメント)と呼べれる色の粉に
何の糊剤を加えるかで種類が決まります。
ドライパステルはこの糊剤が
ごく少量で固められている絵の具です。
糊が少ないので、ドライパステルは
顔料そのものの色が出て
鮮やかできれいです。
その反面、紙に定着する力が凄く弱いのです。
この紙に定着しにくいドライパステルで
厚塗りするというのは
もともと難しいです。
ですが、工夫をすることで
厚塗り感を出すことはできます。
ここからは、私が知っている限りの
パステル画の厚塗り方法を
3つお伝えしたいと思います。
1つ注意点があります。
というのも、私はパステルの本から得た
知識と自分の経験から言っているので
美術学校の教えを受けたわけではない
ということです。
主に外国の本の和訳で信頼できると思う人の
やり方を取り入れたり
画材や紙を自分で色々試したり比較したりして
まとめているため、もちろん
これが正解という訳ではありません。
ソフトパステルで厚塗り(インパスト)する3つのやり方
1柔らかめのソフトパステルで強めの筆圧で描く
+フィキサチーフを何度かスプレーして重ね塗りする
柔らかめのソフトパステルは若干
紙に定着しやすいので
厚塗りには良いです。
柔らかめのソフトパステルは
欧州メーカーのモノが殆どです。
紙も凹凸のある砂目状のものを選ぶと
更に定着力がよくなります。
例えばミ・タント紙です。これは
凹凸があって砂目状です。
ただ、自分の好みの水彩紙でも悪くありません。
私の場合は水彩紙はヴィファールや
ワトソンを好んで使っています。
ミ・タント紙より厚みがあります。
定着力で言えば、もちろん
ミ・タント紙がいいと思います。
それから、1層パステルで描いたら
ターナーのパステルフィキサチーフを
スプレーします。
これは加筆できるタイプですね。
画面にパステルの粉を定着させるために
暫く待ちましょう。
その後、ソフトパステルなどで描いて
またターレンスのパステルフィキサチーフを
スプレーします。
これを繰り返してパステルの層を重ねて
厚塗り感を出します。
ただし、やはりこの方法にも
回数に上限があると思います。
2ジェッソで下塗りしてから描く
アクリル樹脂でできたジェッソを
下地として紙に塗って乾かしてから、
その上にソフトパステルで塗るという方法です。
塗ったジェッソに筆やローラーで
凹凸をつけて乾かしてから
上にドライパステルで塗ると
パステルの定着が更によくなるようです。
ジェッソを塗ったところの層の厚みで
厚塗り感を出すという方法です。
この方法は、面白そうなので
もっと比較していきたいと
思っています。
ジェッソについては
コチラの記事も参考にしてください。
3特殊な紙に描く
小さいサイズならサンドペーパーに描くと
かなり厚塗り感が出ます。
今回紹介しているフランスのメーカーの
キャンソンの特殊な紙
「ミ・タント・タッチ」に描いても
同じように簡単に厚塗り感が出ます。
2023.12現在ミ・タント・タッチは
F4サイズとA3サイズが販売されています。
お値段は手頃とは言い難いですが
高級感があり品質はかなり良いと私は思います。
この紙の質感と詳細は↓を読んでくださいね。
あとは日本のメーカーさんが
パステル専用にもう少し小さいサイズの
サンドペーパーパッドのような紙を
出してほしいなという希望を感じます(笑)
需要がないのかなぁ…。
ミ・タント・タッチ紙の紹介
キャンソン社のミ・タント・タッチとは
日本のマルマンから販売されている
A3とF4サイズの
特殊な厚紙のスケッチブックです。
表面が砂状で独特のざらつきがあり
天糊パッドタイプで取り外しが簡単です。
品質も価格も高いのが特徴。
紙の外側から15mm余白があるため
見栄えが良いです。
ソフトパステルなどのドライパステル
以外にオイルパステル、ペンシル
木炭、アクリルも描けるみたいです。
このスケッチブックは↓の色名の
色付き紙各3枚ずつの12枚入りです。
実際の色味はすぐ上の動画をご覧ください。
・クリーム・フランネルグレー
・セピア・スティジャンブラック
ミ・タント・タッチ紙に紅葉した木を描く【実践編】
ここからは実際に
ミ・タント・タッチ紙に紅葉した木を
描いていきます。
動画は一番上ににありますので
気になる方はご覧ください。
使ったパステルは
主にラウニーソフトパステルと
ゴンドラソフトパステルです。
細い線は
スタビロ社のカーブオテロという
パステル色鉛筆を使っています。
描く大まかな流れは↓になります。
1下書きする
2木の部分の明るい所と暗い所とを分けて
大まかに色を塗る
3木の部分の明・暗・中間を意識して
もう少し細かく描く
4紅葉した葉っぱを大まかに色をつける
5紅葉した葉っぱを手前と向こう側に分けて描く
6地面を描く
7細かい部分を描く
8完成
キャンソン社のミ・タント・タッチを使って
厚塗り(インパスト)をしていきます。
同じキャンソンのミ・タントの紙の厚みが
160g/㎡で
今使っているミ・タント・タッチが
350g/㎡なので
2倍以上の厚みの紙なんですね。
今回は紅葉した木を描いて
どの程度厚く描けるか見ていきます。
デッサン苦手さんは下描きは
写真をトレース(転写)するといいですね。
【イメージで描いた下絵】
うす茶色のラウニーソフトパステルで
幹や枝の形に沿って塗っていきます。
今の段階では特に気にせず
下描き線からはみ出さないように塗ります。
次に暗い茶色のラウニーソフトパステルで
木のカゲを塗っていきます。
紙サイズがA3と少し大きいため
木の下半分と上半分を分けて
少しずつ描き進めていきます。
上半分の木の枝も同様に塗っていきます。
うす灰色の茶色と暗い茶色で
下描きの形に沿って塗っていきます。
全体が大まかに塗れたら
指と綿棒を使ってぼかします。
また、暗い茶色で枯草や
塗り残した木の根の陰や
枝の陰(カゲ)も塗っていきます。
赤茶色のゴンドラソフトパステルで
うす灰色の茶色と濃い茶色の間を
部分的に塗りこんでいきます。
黄土色で所どころ
味付け程度に線描きします。
淡い橙色のラウニーソフトパステルで
枝や幹に日の光が当たっている様子を
描きこんでいきます。
次に黒のラウニーソフトパステルで
枝や幹のカゲの部分を塗っていきます。
パステルを立ててグリグリ厚塗りします。
特に手前に張り出した枝や根は
目立つので念入りに描きます。
上部のあいまいな枝の形も
黒ではっきり塗り分けます。
赤茶色のソフトパステルで
紅葉した葉っぱを平塗りしていきます。
パステルの側面で描いている音が
カサカサと音を立てるのが気持ちいいです。
赤や淡い橙色のラウニーソフトパステルで
手前の枝の赤い葉を短いタッチの点描で
描きこみします。
上の方にも手前に出た葉っぱの塊を
短いタッチの点描で描き加えていきます。
右上部の枝にも同様に
赤や淡い橙色等の色で
描きこんでいきます。
また、葉の塊から出た枝が
手前に出ている奥行き感を出すために
枝の明るい部分を線で描いて強調します。
他にも【手前側】に見えている葉っぱを
ラウニーの柔らかい赤色や明るい橙色で
短めタッチの点描をします。
全体のバランスを見ながら
厚塗りの点描で埋めていきます。
【向こう側】の葉っぱや地面は
パステルの側面で薄めに塗ります。
地面の落ち葉にも
橙色や赤で薄塗りします。
それから、指で地面全体をぼかします。
手前の地面の落ち葉を
濃い目の茶色で点描していきます。
ついでに草や木の根も描きます。
遠くの地面の落ち葉は
水平線を引いて表現します。
手前の地面には赤を加えて鮮やかに。
濃い茶色と黒色で枝や幹のカゲを
細かく描きこみします。
落ち葉に当たった光のキラキラを
明るい橙色を点描して
遠くはごく短い水平線の連続で表現します。
草や木の根に当たる光も描いておきます。
濃い茶色と黒色で
手前の幹の濃いカゲを強調します。
ここからはパステル色鉛筆で
細かい線を描きこんでいきます。
ソフトパステルでは描きにくい小枝も
パステル色鉛筆なら簡単に描けます。
使っているパステルテル色鉛筆は
スタビロ社のカーブオテロです。
完成です!
今回はミ・タント・タッチ紙で
厚塗り(インパスト)を試しました。
他にも水彩紙やミ・タント紙や
ジェッソでも厚塗りできますが、
ミ・タント・タッチ紙が
断トツの厚塗り感でした。
ドライパステルは紙への定着が悪いため
厚塗り(インパスト)は難しい
そのため以下のような工夫が必要
・柔らかめのソフトパステルで強めの筆圧で描く
+加筆できるパステルフィキサチーフを何度かスプレーしてから重ね塗りする
・厚めの紙にジェッソを下地に塗ってその上にパステルで描く
・特殊な紙(例えばキャンソンのミ・タント・タッチ)を使う