ジェッソは、
キャンバスや紙に塗る下地材です。
絵を描く前に
使われることが多い画材ですが、
「そもそも何のために塗るの?」
「種類によって何が違うの?」
と疑問に思う方もいるかもしれません。
この記事では、
ジェッソの役割や使い方、
種類の違いについてまとめました。
目次(押すとその記事にジャンプします)
ジェッソとは何か

現在、ジェッソというと
一般的には
アクリルジェッソを指します。
白い乳液状の下地材で、
本来はアクリル絵具の下地として
使われます。
水で薄めて使うことができ、
乾燥も早いため、
アクリル画以外の下地として
使われることもあります。
使い方は、絵を描く前に
キャンバスや木製パネルなどへ
薄く塗り重ねるだけです。
表面をなめらかに整えたり、
逆に凹凸を付けたりする目的で
使われます。
なお、
ジェッソという名前は、もともと
テンペラ画の下地に使われていた
石膏を意味するイタリア語「Gesso」に
由来しています。
ジェッソの主な成分3つ

ジェッソ=
アクリルエマルション+炭酸カルシウム+チタニウム白
一般的なジェッソは
主にこの3つの成分でできています。
それぞれについて
簡単に見ていきましょう。
アクリルエマルション
アクリルエマルション
(アクリル樹脂エマルション)は、
アクリル系画材の主成分です。
アクリル樹脂そのものは
水に溶けませんが、
水中に細かく分散させて
扱いやすくしたものが
アクリルエマルションです。
ジェッソやアクリル絵具、
メディウムなど、
多くのアクリル画材に使われています。
炭酸カルシウム
炭酸カルシウムは、貝殻やサンゴ、
白亜などに含まれる成分で
ジェッソの表面に
適度なザラつきや吸収性を
与えています。
昔は
炭酸カルシウムと膠(ニカワ)を混ぜて
下地を作る方法も使われていましたが、
現在は扱いやすいジェッソが
広く普及しています。

チタニウム白
チタニウム白は、
現在もっとも広く使われている
白色顔料のひとつです。
隠ぺい力が強く、
少量でも色を明るくできるため、
多くの絵具やジェッソに
使われています。
どうしてジェッソを塗るの?

ジェッソを塗る主な理由は
次の3つです。
1、絵具の定着や発色を良くするため
ジェッソを塗ると
画面に適度な吸収性が生まれ、
絵具が定着しやすくなります。
また、下地の色や素材の影響を
受けにくくなるため、
発色も安定します。
2、キャンバスや木製パネルなどの支持体を保護するため
キャンバスや木製パネルなどの
支持体(絵を描く土台)に
直接絵具を塗ると、
絵具が素材に染み込んで
傷みの原因になることがあります。
そのため、
あらかじめジェッソを塗って
表面を保護します。
この作業は「目止め」と呼ばれます。
なお、木製パネルのヤニやアクを
防ぎたい場合は、ジェッソの前に
シーラーを塗ることがあります。
3、自分の好みの質感にするため
ジェッソの種類や塗り方によって、
なめらかな画面やザラザラした画面を
作ることができます。
描きたい作品や
使用する画材に合わせて
調整できるのも特徴です。
ジェッソの塗り方

ジェッソは
原液のままでも使えますが、
水で薄めることもできます。
水の量は
ジェッソの20%程度が目安です。
薄める時は静かに混ぜましょう。
強くかき混ぜて泡立てると、
乾燥後に気泡の跡が
残ることがあります。
塗る道具は、刷毛や
ペインティングナイフなどです。
ジェッソは刷毛で
縦・横と交差するように
塗ります。
キャンバスでも
木製パネルでも、
最初から厚塗りせず、
薄く塗って乾かす作業を
繰り返すのがコツです。
乾燥には
ドライヤーを使っても構いません。
特にこだわりがなければ、
2〜3回塗りで十分です。
キャンバスなら
布目が少し残る程度、
木製パネルなら
木目が隠れる程度を
目安にするとよいですね。
より平滑な画面にしたい場合は、
塗装と乾燥を何度も繰り返し、
途中でサンドペーパーをかけます。
10回以上塗り重ねることで、
精密描写に向いた
なめらかな画面を
作ることもできます。
また、
作品を展示する予定がある場合は、
側面にもジェッソを塗っておくと
仕上がりがきれいに見えます。
側面は小さめの筆を使うと
塗りやすいです。
★文章だけでは分かりにくい方は、
こちらの動画も
参考にしてみてください。
ジェッソを塗る時の注意点
ジェッソは
アクリル系の下地材なので、
アクリル絵具との相性が
最も良い画材です。
水彩絵具にも使えますが、
油絵具やオイル系画材を使う場合は
注意が必要です。
油性と水性を重ねる時の注意
油性下地の上に
水性絵具を塗ると、
後から剥離やひび割れの原因に
なることがあります。
逆に、水性下地の上に
油性絵具を塗ることは可能です。
ただし、下地が十分に
乾燥している必要があります。
下の図を参考にしてください。

次の2つのNG例は、
油性の上に水性を重ねた失敗例です。
NG例①油絵用キャンバスの上にアクリル系下地を塗る

NG例②油絵具の上にアクリル絵具やアクリルメディウムを塗る

OK例・アクリルジェッソやアクリル絵具の上に油絵具を塗る

これは
「水性下地の上に油性絵具を塗る」
組み合わせです。
アクリルジェッソや
アクリル絵具の上に
油絵具を塗ることは可能です。
ただし、アクリル系画材が
十分に乾燥していることが条件です。
表面が乾いていても
内部には水分が残っているため、
最低でも数日、
できれば1週間程度乾燥させると
安心です。
また、
アクリル絵具とジェッソは、
できれば同じメーカーでそろえると
安心です。
メーカーによって使用している
アクリルエマルションの種類が
異なるため、組み合わせによっては
耐久性に影響する可能性が
あるとされています。
※アクリルエマルションに関する説明は
『絵具の化学』(ホルベイン)を
参考にしています。
ジェッソの種類とメーカーについて
アクリル絵具を
扱っているメーカーでは、
ほとんどの場合
ジェッソも販売されています。
ホルベイン、リキテックス、
ターナー、クサカベなどが
代表的です。
ただし、
パステル画に使用する場合は
メーカー名よりも
表面の質感が重要になります。
私が試した中では、
リキテックスの胡粉ジェッソや
透明ジェッソ、
ホルベインのクリアジェッソLは
比較的パステルが
定着しやすく感じました。
一方で、
ジェッソによって表面の粗さや
描き味は大きく異なります。
迷った場合は、
まず標準的なホワイトジェッソや
クリアジェッソを試し、
自分の描き方に合った質感を
探してみるとよいですね。
ジェッソの主な種類
ジェッソには主に
ホワイトジェッソ、クリアジェッソ、
胡粉ジェッソ、ブラックジェッソ、
カラージェッソがあります。
その他、盛り上げ表現向けの
スーパーヘビージェッソなども
あります。
ホワイトジェッソ
一番標準的な白い下地材です。
ジェッソとだけ言えば、
ホワイトジェッソを意味します。
ホルベイン、リキテックス、ターナー、
クサカベなど各社が販売しています。
初めてならホワイトジェッソや
クリアジェッソなどの
標準的なタイプから試してみるのが
おすすめです。
クリアジェッソ
チタン白を除いた半透明タイプの
ジェッソです。
下描きを残したまま
下地処理ができるため
パステル画では特に便利です。
胡粉(ごふん)ジェッソ
リキテックス独自の
胡粉入りの白い下地材です。
胡粉とは
焼いて細かく砕いた貝殻の粉で
独特のザラつきがあります。
パステル画では
比較的食いつきが良く感じました。
ブラックジェッソ
黒い下地材で
光を浮き上がらせる表現に
向いています。
カラージェッソ
色付きの下地材です。
自分でホワイトジェッソに
アクリル絵の具を混ぜて
色付き下地を作ることもできますが、
既製品は鮮やかな色が特徴です。
パステル画で実際に
複数のジェッソを塗り比べた結果は、
こちらの記事で詳しく紹介しています。
ジェッソの主なメーカー
ジェッソの主なメーカーには
ホルベイン、リキテックス、
ターナー、クサカベがあります。
見ていきましょう。
ホルベイン
ホルベインのジェッソは、
粒子サイズや色数など
種類が豊富です。
【(ホワイト)ジェッソ】
ホルベインのホワイトジェッソには、
粒子サイズS、M、L、LLとあります。
S
1番粒子が細かく
陶器やガラスのような
ツルツルの画面になるので
精密画に向く。
M
標準的大きさの粒子で
標準的な画面作り向き。
L
少し荒い粒子で
ザラザラした画面になる。
LL
とても荒い粒子で
でこぼこの砂目のような
超ザラザラの画面ができる。
個人的に少し癖があり、
大胆な表現向きと感じます。
初めて使うなら
Mタイプが扱いやすいでしょう。
【クリアジェッソ】
M、Lタイプのみ。
個人的にパステル画では
クリアジェッソのLが
下書きも消えず
パステルの食いつきもあり
描きやすかったです。
リキテックス
リキテックスには
胡粉(ごふん)ジェッソなど
独自の商品があります。

【(ホワイト)ジェッソ】
リキテックスのホワイトジェッソは
標準的な白色下地材です。
【胡粉ジェッソ】
日本画で昔から使われてきた
胡粉(ごふん)が入った
白色の下地材です。
独特のざらついた質感があります。
胡粉ジェッソと
胡粉ジェッソ硬練りは
パステルの食いつきが
よいと感じました。
【胡粉ジェッソ硬練り】
胡粉ジェッソよりも
硬めの胡粉入り白色の下地材です。
【クリアジェッソ】
下書きが残るので
パステル画で使いやすいです。
ターナー
ターナーでは、
シュレイパージェッソが
特徴的です。
・シュレイパージェッソ
ベルギーの老舗画材店
「シュレイパー」と
ターナーとのライセンス契約で
作られたジェッソです。
白色と透明と2種類あります。
白色ジェッソ:
S(超微粒子)、M(中粒子)、
L(粗粒子)、XL(超粗粒子)
透明ジェッソ:
M(中粒子)、L(粗粒子)
クサカベ
クサカベのジェッソは白のみで
柔練り(フラットタイプ)と
硬練り(マチエールタイプ)と
2種類あります。
【ホワイトジェッソ】
・柔練り(フラットタイプ)
乳液状で刷毛などで塗ると
筆跡が残らないので
平たい画面を作るのに
向いています。
・硬練り(マチエールタイプ)
筆で塗ると筆跡を残せ、
ペインティングナイフでは
エッジを効かせた下地作りも
できます。
ジェッソとメディウムの違い
ジェッソは主に
下地作りに使う材料です。
一方、メディウムは
絵の具に混ぜて
質感や乾燥時間、透明感などを
調整するために使います。
どちらも
アクリル画材の一種ですが、
目的が異なります。
ジェッソ:下地を作る
メディウム:絵の具の性質を変える
ワニス:作品を保護する
こう考えると
分かりやすいかもしれません。
なお、画材全体を広い意味で
「メディウム」と呼ぶ場合も
ありますが、
一般的な画材店や解説記事では
「メディウム=絵の具に混ぜる補助材」
として使われることが
ほとんどです。
まとめ
ジェッソは、
絵を描く前に塗る
アクリル系の下地材です。
絵具の定着や発色を助けるほか、
支持体を保護したり、
好みの質感の画面を作ったりする
役割があります。
パステル画では、
クリアジェッソや
胡粉ジェッソなどを使うことで、
紙以外の支持体にも
描きやすくなります。
まずはホワイトジェッソや
クリアジェッソなど、
標準的なタイプから
試してみるといいですね。



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