ゴッホの油絵のような厚塗りって
素敵ですね。
残念ながらパステル画で
そのようなモリモリの厚塗りは
難しいですが
厚塗り、インパストのやり方について
物語っていこうと思います。
厚塗りしたいと思っていた方は
最後までお付き合いくださると
有難いです。
では、いってみましょう。
目次(押すとその記事にジャンプします)
パステル画での厚塗り(インパスト)とは
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/vangoghmuseum-s0031V1962-800.jpg)
インパストとは練ったものという意味で
厚く塗った絵の具を指すそうです。
厚塗りして下の色を隠し
部分的に強調する技法で、
もとは油絵の技法のようです。
伝統的な厚塗り(インパスト)は
全部を厚塗りするわけではないそうです。
とはいえ、とにかくゴッホの絵のように
厚塗りの絵はインパクトがありますね。
ちょっとやってみたい、とか
好まれるのも分かります。
さて、パステル画でのインパストは
どうでしょうか。
まず、ソフトパステルなどは
少量の糊剤で固められて作られています。
このようなパステルは
ドライパステルと呼ばれます。
他にはドライパステルはハードパステル、
セミハードパステル、パステル色鉛筆があります。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/colour-3456429_1280.jpg)
もともと絵の具というのは
顔料(ピグメント)と呼べれる色の粉に
何の糊剤を加えるかで種類が決まります。
ドライパステルはこの糊剤が
ごく少量で固められている絵の具です。
糊が少ないので、ドライパステルは
顔料そのものの色が出て
鮮やかできれいです。
その反面、紙に定着する力が凄く弱いのです。
この紙に定着しにくいドライパステルで
厚塗りするというのは
もともと難しいです。
ですが、工夫をすることで
厚塗り感を出すことはできます。
ここからは、私が知っている限りの
パステル画の厚塗り方法を
3つお伝えしたいと思います。
1つ注意点があります。
というのも、私はパステルの本から得た
知識と自分の経験から言っているので
美術学校の教えを受けたわけではない
ということです。
主に外国の本の和訳で信頼できると思う人の
やり方を取り入れたり
画材や紙を自分で色々試したり比較したりして
まとめているため、もちろん
これが正解という訳ではありません。
ソフトパステルで厚塗り(インパスト)する3つのやり方
1柔らかめのソフトパステルで強めの筆圧で描く
+フィキサチーフを何度かスプレーして重ね塗りする
柔らかめのソフトパステルは若干
紙に定着しやすいので
厚塗りには良いです。
柔らかめのソフトパステルは
欧州メーカーのモノが殆どです。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/デューラーラウニー-scaled.jpg)
紙も凹凸のある砂目状のものを選ぶと
更に定着力がよくなります。
例えばミ・タント紙です。これは
凹凸があって砂目状です。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ミ・タントスケッチブック.jpg)
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/インパスト(厚塗り)ミ・タント紙薄緑色に描く大木完成画1.jpg)
ただ、自分の好みの水彩紙でも悪くありません。
私の場合は水彩紙はヴィファールや
ワトソンを好んで使っています。
ミ・タント紙より厚みがあります。
定着力で言えば、もちろん
ミ・タント紙がいいと思います。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ヴィフアール水彩紙画像.jpg)
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ヴィフアール水彩紙そのまま厚塗り.jpg)
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ワトソンナチュラルブロック表紙-1.jpg)
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ワトソンナチュラルブロック中身.jpg)
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ワトソンナチュラルブロック見開き-2.jpg)
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ワトソンナチュラルブロック見開きアップ1-1.jpg)
それから、1層パステルで描いたら
ターナーのパステルフィキサチーフを
スプレーします。
これは加筆できるタイプですね。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ターレンスパステルフィキサチーフ-1.jpg)
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ターレンスのパステルフィキサチーフ.jpg)
画面にパステルの粉を定着させるために
暫く待ちましょう。
その後、ソフトパステルなどで描いて
またターレンスのパステルフィキサチーフを
スプレーします。
これを繰り返してパステルの層を重ねて
厚塗り感を出します。
ただし、やはりこの方法にも
回数に上限があると思います。
2ジェッソで下塗りしてから描く
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/リキテックスジェッソ水20%まで.jpg)
アクリル樹脂でできたジェッソを
下地として紙に塗って乾かしてから、
その上にソフトパステルで塗るという方法です。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/木に部分にジェッソ1.jpg)
塗ったジェッソに筆やローラーで
凹凸をつけて乾かしてから
上にドライパステルで塗ると
パステルの定着が更によくなるようです。
ジェッソを塗ったところの層の厚みで
厚塗り感を出すという方法です。
この方法は、面白そうなので
もっと比較していきたいと
思っています。
ジェッソについては
コチラの記事も参考にしてください。
3特殊な紙に描く
小さいサイズならサンドペーパーに描くと
かなり厚塗り感が出ます。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/サンドペーパー1-225x300-1.jpg)
今回紹介しているフランスのメーカーの
キャンソンの特殊な紙
「ミ・タント・タッチ」に描いても
同じように簡単に厚塗り感が出ます。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ミ・タント・タッチA3-1.jpg)
2023.12現在ミ・タント・タッチは
F4サイズとA3サイズが販売されています。
お値段は手頃とは言い難いですが
高級感があり品質はかなり良いと私は思います。
この紙の質感と詳細は↓を読んでくださいね。
あとは日本のメーカーさんが
パステル専用にもう少し小さいサイズの
サンドペーパーパッドのような紙を
出してほしいなという希望を感じます(笑)
需要がないのかなぁ…。
ミ・タント・タッチ紙の紹介
キャンソン社のミ・タント・タッチとは
日本のマルマンから販売されている
A3とF4サイズの
特殊な厚紙のスケッチブックです。
表面が砂状で独特のざらつきがあり
天糊パッドタイプで取り外しが簡単です。
品質も価格も高いのが特徴。
紙の外側から15mm余白があるため
見栄えが良いです。
ソフトパステルなどのドライパステル
以外にオイルパステル、ペンシル
木炭、アクリルも描けるみたいです。
このスケッチブックは↓の色名の
色付き紙各3枚ずつの12枚入りです。
実際の色味はすぐ上の動画をご覧ください。
・クリーム・フランネルグレー
・セピア・スティジャンブラック
ミ・タント・タッチ紙に紅葉した木を描く【実践編】
ここからは実際に
ミ・タント・タッチ紙に紅葉した木を
描いていきます。
動画は一番上ににありますので
気になる方はご覧ください。
使ったパステルは
主にラウニーソフトパステルと
ゴンドラソフトパステルです。
細い線は
スタビロ社のカーブオテロという
パステル色鉛筆を使っています。
描く大まかな流れは↓になります。
1下書きする
2木の部分の明るい所と暗い所とを分けて
大まかに色を塗る
3木の部分の明・暗・中間を意識して
もう少し細かく描く
4紅葉した葉っぱを大まかに色をつける
5紅葉した葉っぱを手前と向こう側に分けて描く
6地面を描く
7細かい部分を描く
8完成
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/ミ・タント・タッチA3.jpg)
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot.jpg)
キャンソン社のミ・タント・タッチを使って
厚塗り(インパスト)をしていきます。
同じキャンソンのミ・タントの紙の厚みが
160g/㎡で
今使っているミ・タント・タッチが
350g/㎡なので
2倍以上の厚みの紙なんですね。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_2.jpg)
今回は紅葉した木を描いて
どの程度厚く描けるか見ていきます。
デッサン苦手さんは下描きは
写真をトレース(転写)するといいですね。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/(下書きパステル色鉛筆で)写真.jpg)
【イメージで描いた下絵】
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_3.jpg)
うす茶色のラウニーソフトパステルで
幹や枝の形に沿って塗っていきます。
今の段階では特に気にせず
下描き線からはみ出さないように塗ります。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_4.jpg)
次に暗い茶色のラウニーソフトパステルで
木のカゲを塗っていきます。
紙サイズがA3と少し大きいため
木の下半分と上半分を分けて
少しずつ描き進めていきます。
上半分の木の枝も同様に塗っていきます。
うす灰色の茶色と暗い茶色で
下描きの形に沿って塗っていきます。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_5.jpg)
全体が大まかに塗れたら
指と綿棒を使ってぼかします。
また、暗い茶色で枯草や
塗り残した木の根の陰や
枝の陰(カゲ)も塗っていきます。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_6.jpg)
赤茶色のゴンドラソフトパステルで
うす灰色の茶色と濃い茶色の間を
部分的に塗りこんでいきます。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_7.jpg)
黄土色で所どころ
味付け程度に線描きします。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_8.jpg)
淡い橙色のラウニーソフトパステルで
枝や幹に日の光が当たっている様子を
描きこんでいきます。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_9.jpg)
次に黒のラウニーソフトパステルで
枝や幹のカゲの部分を塗っていきます。
パステルを立ててグリグリ厚塗りします。
特に手前に張り出した枝や根は
目立つので念入りに描きます。
上部のあいまいな枝の形も
黒ではっきり塗り分けます。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_10.jpg)
赤茶色のソフトパステルで
紅葉した葉っぱを平塗りしていきます。
パステルの側面で描いている音が
カサカサと音を立てるのが気持ちいいです。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_11.jpg)
赤や淡い橙色のラウニーソフトパステルで
手前の枝の赤い葉を短いタッチの点描で
描きこみします。
上の方にも手前に出た葉っぱの塊を
短いタッチの点描で描き加えていきます。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/着彩途中.jpg)
右上部の枝にも同様に
赤や淡い橙色等の色で
描きこんでいきます。
また、葉の塊から出た枝が
手前に出ている奥行き感を出すために
枝の明るい部分を線で描いて強調します。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_12-1.jpg)
他にも【手前側】に見えている葉っぱを
ラウニーの柔らかい赤色や明るい橙色で
短めタッチの点描をします。
全体のバランスを見ながら
厚塗りの点描で埋めていきます。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_13.jpg)
【向こう側】の葉っぱや地面は
パステルの側面で薄めに塗ります。
地面の落ち葉にも
橙色や赤で薄塗りします。
それから、指で地面全体をぼかします。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_14.jpg)
手前の地面の落ち葉を
濃い目の茶色で点描していきます。
ついでに草や木の根も描きます。
遠くの地面の落ち葉は
水平線を引いて表現します。
手前の地面には赤を加えて鮮やかに。
濃い茶色と黒色で枝や幹のカゲを
細かく描きこみします。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_15.jpg)
落ち葉に当たった光のキラキラを
明るい橙色を点描して
遠くはごく短い水平線の連続で表現します。
草や木の根に当たる光も描いておきます。
濃い茶色と黒色で
手前の幹の濃いカゲを強調します。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_16.jpg)
ここからはパステル色鉛筆で
細かい線を描きこんでいきます。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_17.jpg)
ソフトパステルでは描きにくい小枝も
パステル色鉛筆なら簡単に描けます。
使っているパステルテル色鉛筆は
スタビロ社のカーブオテロです。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/完成画(ミ・タント・タッチ紙).jpg)
完成です!
今回はミ・タント・タッチ紙で
厚塗り(インパスト)を試しました。
他にも水彩紙やミ・タント紙や
ジェッソでも厚塗りできますが、
ミ・タント・タッチ紙が
断トツの厚塗り感でした。
![](https://nishino-pastel.net/wp-content/uploads/2023/12/Snapshot_18.jpg)
ドライパステルは紙への定着が悪いため
厚塗り(インパスト)は難しい
そのため以下のような工夫が必要
・柔らかめのソフトパステルで強めの筆圧で描く
+加筆できるパステルフィキサチーフを何度かスプレーしてから重ね塗りする
・厚めの紙にジェッソを下地に塗ってその上にパステルで描く
・特殊な紙(例えばキャンソンのミ・タント・タッチ)を使う