今回はどのジェッソが
パステル画を描くのに向いているのか
試していきたいと思います。
3つのメーカーのジェッソを紙に塗り
その上にソフトパステルと
オイルパステルを
試し描きしていきます。
個人的感想ではありますが
パステル画に向くおススメジェッソを
最後に紹介しています。
他のジェッソなども
チェックしてみて下さい。
では、早速。
目次(押すとその記事にジャンプします)
パステルに向くジェッソはどういうタイプ
考えてみて下さい。
ここでいうパステルとは
オイルパステル以外の
粉っぽいドライパステルを指しています。
画材店での使用画材の例では
チョークと書かれている場合もあります。
ドライパステルは粉っぽいため
ツルツルした紙に描いても
紙に定着しません。
そのため、
細かい砂目状の凹凸のある面を持つ紙が
ドライパステルに向いています。
それで、パステルでは
キャンソン社のミ・タントが
好まれているのだと思います。
では、今度は
ドライパステルに向いているジェッソは
どういうジェッソでしょうか。やはり
細かい砂目状の質感を持ったジェッソが
向いていると思います。
また、パステルと言えば
「ぼかし」の技法を使うので
その効果のあるジェッソが
更にパステルの効果を高めてくれそうです。
色のついたジェッソが欲しい場合は
カラージェッソを買うか
同じメーカー会社のアクリル絵具を
ジェッソに混ぜてください。
なぜ同じ会社かというと
アクリル絵具と(アクリル)ジェッソには
同じ種類のアクリルエマルションが含まれている可能性が高く
メーカーが違うと
アクリルエマルションの種類による違いから
剥がれたりひびが入ったりする場合もある
ということです。
(絵の具の科学p119より)
実際に色々なジェッソ下地の上にパステルを塗ってみよう
ジェッソ比較のやり方
(1)
リキテックス、ホルベイン、ターナーの
それぞれのジェッソを画用紙に
薄く2回塗り重ねて乾かします。
(※準備としてパネルに水張りします。
この下の
【重要】紙にジェッソを塗る場合の注意点
を参考にしてください。)
1回目を塗った後ジェッソを乾かしてから
2回目を塗ります。
塗る場所については
メーカーごとに
上2段は各ジェッソそのままで塗り
下2段はジェッソに
黒色のアクリル絵具を混ぜて
有色下地にして塗ります。
(2)
乾いたジェッソの上にパステルを塗ります。
塗るパステルの種類は
ソフトパステルとオイルパステルです。
1段ごとに
ソフト、オイルと交互に塗り分けます。
また、上2段はそのままのジェッソの上に
赤い猫に青い背景で塗り
下2段は黒を混ぜたジェッソの上に
黄色い猫に白背景で塗ります。
ジェッソとパステルの種類ごとに
パステルの付き方や発色の違いを
比べるのが狙いです。
【重要】紙にジェッソを塗る場合の注意点
3つ注意点があります。
・水張りをすること
・厚みのある紙を使うこと
・ジェッソを数回に分けて薄く塗ること
【水張りをする】
まず注意点として
ジェッソには水が含まれているため
紙の上に塗る場合には
紙がたわまないように
水張りという作業が必要です。
水張り(平張り)については↓の動画
(ウニアトリエさん)を参照して下さい。
※平張りして作品ができた後で
紙を木製パネルから剥がす方法と
木製パネルに張り付いた水張りテープを
剥がす方法はコチラの動画↓
(和雑貨屋つらら庵さん)をご覧下さい。
また、
ジェッソ自体の重みに耐えられるように
ある程度の厚みのある画用紙や水彩紙を
使いましょう。
【ジェッソを数回に分けて薄く塗り重ねる】
一度に厚ぼったくジェッソを塗らず
薄く2~3回に分けて塗ります。
パステル画に向くジェッソ比較/実践編
(1)ジェッソ塗り作業
リキテックスのジェッソです。
白くてサラっとしています。
水を少し混ぜて溶きやすくします。
水の量は目安で
ジェッソの20%くらいまでです。
リキテックスのジェッソは
普通の水彩絵の具を
塗っているような感触です。
リキテックスのクリアジェッソを
水で溶きます。
普通のジェッソより
トロッと水っぽくて
半透明です。
水を混ぜなくても塗りやすそうです。
リキテックスのクリアジェッソを塗ります。
半透明なので
下地が見えたまま塗ることができます。
さらさらとした描き心地ですが
意外にざらつき感があります。
リキテックスのジェッソに
リキテックスのアクリル絵具の黒を
混ぜます。
黒の種類はアイボリーブラックです。
灰色になったジェッソを塗ります。
ちょっと厚ぼったくなってしまいました。
理想は薄く塗り重ねるです。
下書きが隠れて見えなくなりました。
リキテックスのクリアジェッソに
リキテックスのアクリル絵具の黒を
混ぜます。
半透明で灰色になったジェッソを
塗ります。下書きは透けてみえたままです。
やはりさらっと塗りやすいですが
ざらつき感があります。
リキテックスの胡粉ジェッソに
水を混ぜています。
胡粉ジェッソを塗ります。
クリアジェッソよりは白いですが
下書きが見えています。
普通のジェッソとクリアジェッソとの
中間くらいの粘り気で
クリアジェッソのざらつきとは
違ったざらつき感があります。
胡粉ジェッソには
貝殻の粉が入っているためです。
リキテックスの胡粉ジェッソに
リキテックスのアクリル絵具の黒を混ぜます。
黒の種類はアイボリーブラックです。
胡粉ジェッソ+黒を塗ります。
1度塗りでは、やや透けて
下地が見えています。
ざらつき感があります。
リキテックスの胡粉ジェッソ硬練りに
水を混ぜています。
水の量が多すぎたのか
胡粉ジェッソとの違いは
あまり感じませんでした。
ざらつき感がありさらっとした
塗り心地です。
やはり下地が透けて見えています。
本来は硬練りの方が
筆跡が残る仕様になっているようです。
リキテックスの胡粉ジェッソ硬練りに
リキテックスのアクリル絵具の黒を混ぜています。
胡粉ジェッソ硬練り+黒を
塗ります。ざらつき感があり、
やや下地が見えています。
ホルベインのジェッソM(標準粒子)を
水で溶いて混ぜます。
ホルベインのジェッソMを
塗ります。
リキテックスの普通のジェッソより
若干の粘り気がありますが
ざらつき感はありません。
下書きは消えました。
ホルベインの
ジェッソのLL(極粗粒子)タイプを
塗ります。
かなりのざらつき感があり
砂状というより小さめの砂利のようです。
ゴツゴツした感じです。
ホルベインのジェッソM(標準粒子)に
ホルベインのアクリル絵具の黒を混ぜます。
黒の種類はアイボリーブラックです。
ホルベインのジェッソM(標準粒子)+黒を
塗ります。灰色で下書きが隠れました。
ホルベインのジェッソLL(極粗粒子)に
ホルベインのアクリル絵具の黒を混ぜます。
ホルベインのジェッソLL+黒を
塗ります。
ゴツゴツした表面になり
下書きが隠れます。
ホルベインのクリアジェッソL(粗粒子)を
塗ります。
トロッとした乳白色で
砂状のざらつき感があります。
リキテックスの胡粉ジェッソに似ています。
透明のジェッソなので下書きが見えています。
ホルベインのクリアジェッソL(粗粒子)に
ホルベインのアクリル絵具の黒を混ぜます。
ホルベインのクリアジェッソL+黒を
塗ります。
透明感のある灰色で下書きが透けます。
サラっとした塗り心地ですが
ざらつき感があります。
最後はターナーのジェッソを
塗ります。
塗った感じはホルベインのMタイプに
似ていますが
もっとノッペリした感じがします。
マットな感じでしょうか。
ターナーのジェッソに
ホルベインのアクリル絵具の黒を混ぜます。
混ぜる絵の具のメーカーが違うと
剥がれたり亀裂が入ったりすることも
あるようです。
今回は、手持ちがなかったので
このように違うメーカーを使いました。
ターナーのジェッソ+ホルベインの黒を
塗ります。
灰色のマットな質感になります。
下書きは1度塗りでは
少し見えるか見えないかの状態です。
●今までの作業を繰り返して
2度塗りしました。
下書きがはっきり見えているのは
リキテックス、ホルベインとも
クリアジェッソだけです。
胡粉ジェッソ、胡粉ジェッソ硬練りも
黒を混ぜなければ
うっすらと下書きが見えています。
(2)ソフトパステル、オイルパステル塗り作業
●ここからは2度塗りの後
1日乾かしたジェッソの上に
ソフトパステルとオイルパステルを
塗っていきます。
リキテックスのジェッソの上に
ソフトパステルを塗ります。
ある程度の凹凸ができていて
描きやすいです。
リキテックスのジェッソ+黒の上に
ソフトパステルで塗ります。
ある程度の凹凸があって
塗りやすいです。
下地に色がついたお陰で
白の発色が良くなりました。
リキテックスのクリアジェッソの上に
ソフトパステルで描きます。
下書きの線が見えているため描きやすいです。
そして、砂状のざらざらが丁度よく
パステルの定着がかなりよかったです。
発色も綺麗です。
リキテックスのクリアジェッソ+黒の上に
ソフトパステルで描きます。
これも、下書きが見えて描きやすく
かなり発色も定着も良かったです。
リキテックスの胡粉ジェッソの上に
ソフトパステルで描きます。
リキテックスのクリアジェッソと違った
カサカサした描き心地です。
リキテックスのジェッソと
クリアジェッソとの中間位の色の付き方ですが
胡粉ジェッソは普通のジェッソに比べて
発色がやや良いのと
「ぼかし」が綺麗になりやすかったです。
リキテックスの胡粉ジェッソ+黒の上に
ソフトパステルで描きます。
クリアジェッソに黒を混ぜた場合よりも
僅かにこちらの方が発色が良い気がします。
下の色の違いだと思いますので
ここまで来ると好みの差になりそうです。
リキテックスの胡粉ジェッソ硬練りの上に
ソフトパステルで描きます。
胡粉ジェッソとの差は
よく分かりませんでした。
今回はジェッソに水を混ぜて塗ったので
ジェッソをそのまま塗ると
違う結果になるかもしれません。
硬練りは本来は
筆跡が残る仕様になっています。
リキテックスの胡粉ジェッソ硬練り+黒の上に
ソフトパステルで描きます。
胡粉ジェッソの上に描いた感触との違いを
それ程感じませんでした。
わずかに筆跡が残ってパステルの白色に
線の流れがあるような気もします。
ホルベインのジェッソM(標準粒子)の上に
ソフトパステルで描きます。
リキテックスの普通のジェッソと同じく
パステルの定着がよくなりました。
ホルベインのジェッソLL(極粗粒子)の上に
ソフトパステルで描きます。
荒目でゴツゴツした上に描くので
隙間ができて
紙の白が目立つ仕上がりになりました。
ホルベインのジェッソM+黒の上に
ソフトパステルで描きます。
こちらも定着、発色がよくなる感じです。
描く枠が小さすぎたのは失敗でした。
ホルベインのジェッソLL+黒の上に
ソフトパステルで描きます。
ゴツゴツした下地のために下の色が
チラチラと見えた仕上がりになりました。
コンクリートの打ちっぱなしのような
画面が出来上がります。
ホルベインのクリアジェッソL(粗粒子)上に
ソフトパステルで描きます。
Lタイプはザラザラとした砂状の表面が
ソフトパステルをよく絡めとって
描きやすく定着しやすいです。
透明ジェッソなので、下書きが見えて
描きやすいのも特徴です。
ホルベインのクリアジェッソL(粗粒子)+黒の上に
ソフトパステルで描きます。
黒を混ぜたクリアジェッソLも
ザラザラ砂目状で定着しやすく
発色も良く綺麗に仕上がりました。
下書きも見えて形が取りやすかったです。
ターナーのジェッソの上に
ソフトパステルで描きます。
ホルベインのM(標準粒子)タイプと
ほぼ同じくらいの描き心地と仕上がりです。
ターナーのジェッソ+ホルベインの黒の上に
ソフトパステルで描きます。
これも
ホルベインのMジェッソに黒を加えたのと
同じくらいの仕上がりだと思います。
ジェッソ比較に使ったモノ
↓実際に使ったモノに★マークをつけました。
私の手持ちの道具を代替品として使ったけれども
実際に使っていないモノには★がついていません。
比較したジェッソの種類と紙
【リキテックス】
★ジェッソ
★クリアジェッソ
★胡粉ジェッソ
★胡粉ジェッソ硬練り
【ホルベイン】
★ジェッソ標準粒子タイプM
★クリアジェッソ粗粒子タイプL
★ジェッソ極粗粒子タイプLL
【ターナー】
★ジェッソ
ここまではパステル画に向くジェッソを
調べるために使ったモノですが
その他のメーカーのジェッソについては
↓コチラの記事もどうぞ。
【紙】
★マルマンのスケッチブックの画用紙
(サイズ:287㎜×202㎜)
画用紙以外でもある程度厚みのある紙になら
ジェッソを塗れるので他にも試すと面白いですね。
ジェッソに混ぜた絵の具
アクリルジェッソにアクリル絵具を混ぜると
色の付いたジェッソになります。
今回は黒の中のアイボリーブラックという
アクリル絵具を使いました。
★【リキテックスのアクリル絵具(アイボリーブラック)】
★【ホルベインのアクリル絵具(アイボリーブラック)】
ジェッソを塗る道具
【筆またはペインティングナイフ】
(筆)
★ポスターカラー用の平筆
そのほかナイロン製などの
傷んでもよい平筆や刷毛がおススメ。
ジェッソは乾くと耐水性になって
固まるので基本的には傷みが激しいです。
使っている最中は筆、刷毛とも
水につけておいて乾かないように
お互い注意しましょう。
(ペインティングナイフ)
プラスチック製や金属製があります。お好みで。
【筆洗】
筆を洗うのに使います。
水を入れられる物であれば何でもOK。
★ファーバーカステルの筆洗
軽くて折り畳みができる。
フチがなみなみで筆を置きやすい。
【パレット】
★陶器製の絵皿
(ジェッソ塗りにはラップをかぶせると便利)
プラスチック製、金属製、
陶器製パレットの場合には
台所のラップを上にかぶせて
ジェッソを混ぜることができます。
塗り終わったら、
ラップごとジェッソを捨てられます。
又は、紙パレットなら使い終わったら一枚ごと
捨てられるので便利です。
ジェッソの上に塗る画材
【ソフトパステル】
★ラウニーのソフトパステル
【オイルパステル】
★ムンギョのギャラリーアーティストソフトオイルパステル
【パステル画におススメのジェッソ】結果
個人的なおススメですが、
結果は次のようになりました。
【ホルベイン】
クリアジェッソL(粗粒子タイプ)
【リキテックス】
クリアジェッソ
胡粉ジェッソ
胡粉ジェッソ硬練り
パステル画の下地として
特に可もなく不可もなくと
個人的に感じたのは次のとおり。
リキテックスのジェッソ
ホルベインのジェッソM
ターナーのジェッソ
また、特殊な表現に向くのは
ホルベインのジェッソLL(極粗粒子)でした。
小さい作品には向かず、大胆な表現が
できそうだと思いました。
細部描写はできず、あまりぼかせません。
ゴツゴツとした表面ができるジェッソです。
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